論文の構成に関する説明
名前:翟 申駿(たく しんしゅん)(Zhai Shenjun)
所属:政策・メディア研究科後期博士課程(PS)
一、論文の章立て
序章
第一部分(年金制度理論)
第1章 日本における年金制度
第2章 世界各国の年金制度
第二部分(年金の加入者・受給者と母体企業の法的関係)
第3章 年金受給権の法的根拠と給付減額
第4章 年金減額の裁判例
第三部分(母体企業と外部年金運用機関の法的関係)
第5章 信託法理における受託者責任および年金制度運営
第6章 年金ガバナンス
第四部分(外部年金資産管理運用機関と年金の加入者・受給者の法的関係)
第7章 加入者・受給者の外部年金資産管理運用機関に対する権利請求
第8章 エリサ法における受給権保護及びエリサ法から日本への示唆
第五部分(中国年金制度に関する検討)
第9章 中国の公的年金制度および私的年金制度の主要な問題点およびその原因
第10章 中国における年金受給権に関する法的分析
第六部分(本研究の中国年金制度に対する示唆)
第11章 海外の年金制度からの示唆
第12章 年金と社会保障諸制度の連携
第13章 中国年金制度の立法化
第14章 現行の中国年金制度に対する改革案
おわりに
付録
謝辞
文献表
二、新知見
本研究の新知見は主に以下の4点である。
①中国における年金受給権に関する法制度
中国の現行法制度に基づき、年金信託の成立要素(すなわち擬制信託が認められるか否か)等につき裁判所の判断基準を検討し、法制度(主に民事法制度)における受給権保護の現状を解明して、今後の立法化の方向性等を示した。
②年金税制度
EETパターン(年金受給段階のみに徴税)という徴税方法を検討し、今後中国の私的年金税制度を構築する際にEETパターンを導入することを提案した。
③各社会保障制度の連携
年金制度の改革は医療,介護等の各社会保障制度と関連付けて改革を進めなければならず、中国はまだ農村及び都市の戸籍制度があり、今後統一的な社会保障制度を構築することにつき提言した(公平性および効率性の観点から)。
④年金信託
私的年金制度は公的年金制度の重要な補足であると考え,まず中国現行法の私的年金に関する許認可制を廃止すべきであり、また、信託受益権流動ルートを提供することにより,年金信託設定者の異なる要望を満たすためこととなる。
三、全体的な流れ
本研究では,第一部分から第四部分において加入者,受給者の利益保護をめぐって母体企業,労働者(年金の加入者,受給者)および外部年金資産管理運用機関の三者間の法的関係を論じ,また,第五部分および第六部分において中国の年金法制度につき検討を加え,本研究で論述した年金制度の在り方を年金制度が構築されていない中国へ示唆できる部分を示した。
中国は現在民法典の立法化を始め、立法化活動を進んでおり、今後公的年金制度および私的年金制度に関する諸法令を制定することが考えられる。中国の事情を踏まえ、日本等の先進国の制度から中国へ示唆できる部分を捻出し、また中国独特の問題点の改善策を示し、実現可能性のある改革案を提案した。
以上